花子は今日も書く

書かないと死んでしまう。人生からくだらない毎日まで、徒然なるままに

03 弟との別れ

●母への嫌悪

もう当時は、妊婦ですら汚いもののように思った。
弟を連れて、再び祖母の家に逃げた。しかし祖母は足に障害があり、年金生活を送る身であり、今思えば大きな負担をかけてしまった。

そこから、花子は学校に行かなくなった。母が家に来るたび、トイレやベランダに駆け込んで逃げた。週末は、弟を連れて図書館に行き、弟によく本を読み聞かせた。自分自身も驚くほど読んだ。国語力はこの時培われたと思う。

この時期、弟はよくいじめられていた。よく消しゴムなどの文房具をなくして帰ってきた。花子は「誰がそんなことするんや!」と言って憤り、答えない弟を叩いていた。なんとも申し訳なく、ヒドイことをしたものだと思う。謝ってすむものではないが……


●継母との出会い

どういう経緯か知らないが、父と新しい奥さん(これがまた母より10歳以上若いときた)が花子と弟の2人を連れて遊びに出かけた。遊び自体は、久しぶりのことでとても楽しかった記憶がある。しかし、花子にとって新しい奥さんは、自分の不幸に陥れた元凶が形を成して現れた物体そのものであるように思えた。この女が父をたぶらかさなければ、こんな貧乏で惨めな思いもせず、母が壊れることもなかったのだと思い、憎んだ。

父はその女に花子を引き合わせ「ほら、目元が良く似ているだろ」と言った。女は「ほんと一緒だ」と笑った。花子はその時、どういう顔をしていいか分からなかった。内面に渦巻く怒りや憎しみと、父の笑顔。

父は離婚直前に花子と2人きりになった時「お父さんが、いなくなっても、結婚式は呼んでな」と深刻そうに話したことがあった。(15年後ぐらいに聞いたところ、覚えてないと言われて怒りが再燃したのは別の話。あんたの子どもと離れる決意って、そんなもんやったんかい)。


●弟との別れ

その後、父は花子に「うちに来ないか」と聞いた。
花子は断った。ほかの男と遊ぶ女になった母も嫌いだが、よその女のところに行ってしまった父も嫌いだった。さらに父の家には、知らない若い女がいるのだ。耐えられない。

けれども、弟は父のもとへ行くことになった。もともと弟は祖母と折り合いが悪く、男の子らしい粗暴さもある弟を祖母はあまり好きになれなかった。花子は、父親のもとでのほうが、弟が幸せになれるのではないかと思った。どういういきさつでそうなったのか知らないが、弟は父に引き取られていった。

父に引き取られる当日、花子は子どもながら「弟のために、異母兄弟は作らないでほしい」と勝手なお願いをした。父はうなずいていた。(この後、父は4人の子どもを作った。花子は20近くも離れた異母兄弟たちをどうしても受け入れることが出来ないでいる。)そして家族4人でいたころにクリスマスプレゼントに買ってもらったゲームをすべて弟にあげた。

このゲームはのちに全て捨てられたと聞いた。弟が勉強しなかったから、らしいが、花子は自分の気持ちや仲が良かった頃の家族がまるっきり失われたように思えて、ひどく、哀しかった。

弟が引き取られてから、初めての弟の誕生日。花子は手紙を書いて、父に持っていった。父は「渡せない」と花子の手紙を断った。お姉ちゃん子だった弟が、手紙を読めば、お姉ちゃんに会いたいという、新しいお母さんに懐かなくなってしまう、というのが理由だった。花子はそのやるせなさをどこに持っていっていいのか分からなかった。

弟に会いたい
唯一血のつながった兄弟に、なぜ会うことが出来ないのか。

それから大人になって努力をして、連絡先を知り、弟に再会できたのは14年後のことだった。
この前の誕生日、弟から生まれて初めて「誕生日おめでとう」という連絡をもらった。その一言が、涙が出るほど嬉しかった。